EAを動かすときの流れは、思いついた手法をすぐ実運用するのではなく、準備、確認、デモ取引、本取引、見直しという順番で進めると安定しやすいです。最初に決めるのはどれくらい勝ちたいかではなく、どれくらいのマイナスまでなら落ち着いて受け止められるかです。一日にどれだけ下がったら新規のEAを止めるか、同時にいくつまでポジションを持つか、1回の取引に資金の何%を使うかを数字で決めます。ここがゆるいままだと、良い時は気にならなくても、荒れた日に一気に苦しくなりやすいです。
次に、売買ルールを言葉で書き出します。どの通貨と時間足で動かすのか、買いと売りの条件は何か、利確と損切の考え方はどうするか、取引できる時間帯はいつか、重要なニュースの前後は新規を止めるのか、スプレッド(買値と売値の差)が広い時は見送るのか、といった現実的な決めごとを先に固めます。ここで大事なのは、短期の偶然に合わせて条件を増やしすぎないことです。ルールが増えるほど、たまたまの過去にだけ合って、今後は外れやすくなります。
準備ができたら、過去のチャートで同じルールを当てはめて動きを確かめます。手数料とスプレッド、そして注文と約定のズレ(いわゆるスリッページ)も見込みます。相場が落ち着いている時期だけでなく、急に大きく動いた時期も必ず含めます。数字がやたら良い場合は、条件をいじり過ぎているおそれがあります。別の年や別の月でも、同じ設定で近い傾向が出るかを確かめ、良すぎる一点より、安定して「そこそこ」出る設定を選ぶほうが結果として安心です。
次はデモ口座や極小ロットで、2週間から1か月ほど実際に回して、過去の結果との違いをチェックします。思ったより約定が遅い時間帯はどこか、スプレッドが広がりやすい日や時間はいつか、EAの計算が重くなって反応が鈍ることはないか、といった実務の癖をここで見つけます。必要があれば、取引時間をずらしたり、条件を少し緩めたりして調整します。複数のEAを同時に回すなら、同じ方向に偏りやすい通貨の組み合わせになっていないかも見直します。
本運用に入る前に、止める線を口座単位で明確にします。例えば「一日で口座資金が5%減ったら新規停止、10%減ったらいったん全て閉じる」のように、誰が見ても同じ判断になる線を決めます。最大ポジション数や合計ロットの上限も先に決めます。EAごとにマジックナンバーを分け、別のEAのポジションに触れないようにします。VPSやパソコンの負荷も確認し、CPUやメモリが常に高負荷状態で張り付くようなら、数を減らすか分けて動かします。
運用が始まったら、毎日のチェックが習慣になります。含み損が増える速さがいつもより早くなっていないか、注文の取りこぼしや再注文が増えていないか、ズレの平均が広がっていないか、曜日や時間帯で成績に極端な差が出ていないかを見ます。気になる兆しが出たら、まずロットを下げて落ち着かせるか稼働を一旦停止して、原因を確かめてから元に戻します。設定を変えたときは、日付と変更点、理由、変えた後の結果をノートに残しておくと、後からの手当てが楽になります。
長くEAトレードをしていると、これまでのやり方がかみ合わない時期が必ず来ます。そんなときにあわててまったく新しいEAに飛びつくより、今のルールをいったんシンプルに戻し、余計な条件を外す、足りない安全装置だけ丁寧に足す、といった手入れから始めると、無駄な作り直しを減らせます。どうしても合わないなら、ロットを落として様子を見るか、いったん止めて準備からやり直す判断も立派な選択です。
以上のように、MT4 EAの流れは、最初に守る線を決め、ルールを言葉にし、過去のチャートで確かめ、小さく試し、本運用では止める線を守りながら毎日見直す、という積み重ねです。この順番を守るほど、短期の波に振り回されにくくなり、落ち着いた運用がしやすくなります。やること自体は難しくありません。焦らず一つずつ進めれば、少しずつでも安定に近づいていきます。